そいつは立ちはだかっていた。
そりゃもう悠然と立ちはだかっていた。
時刻は午後3時半ごろ。鷹司学園の校門の目の前。
姉の渚と、先ほどできたばかりの友2人と、帰路を共にしようと、その場所に差し掛かった双海彰吾は、その、他の生徒が何やら奇異の視線を送りながら通り過ぎていく少年を見て、立ち止まらずにはいられなかった。
背は120センチほど。半袖半ズボンの服にマントを羽織り、頭にはハチマキ。加えて、背にはおもちゃの刀らしきもの、腰にはガンホルスター、そして左手に黄色い……工事現場の作業員がかぶるヘルメットのようなものを持っていた。
「…………」
「…………」
それは思わず姉弟揃って呆然としてしまうほどの存在感。ついでに同行していた弟の友人2人もわりとわけがわからずきょとんとしていた。
で、こちらが呆然としていると、その人物の口がゆっくりと開かれた。
「……双海渚と、双海彰吾だな」
「わ、喋った!」
「そりゃ、喋るだろ……」
アバンギャルドな格好の少年の声を聞き、何故かはしゃぐ姉。喋るUMAでも見た気にでもなっているのかもしれない。
「えっと……お知り合い?」
友のうち、女の方がおずおずと尋ねてくる。しかし、どうにも……彰吾には肯定も否定もできかねる状況だった。
どう返事をしたものかと悩んでいると、その少年が再度、今度はやや苛立たしげに口を開いた。
「もう一度訊く。双海渚と彰吾だな……?」
「あ、はいはい。そうよ、私が、渚。で、こっちが弟の彰吾」
返事をしていなかったことに気付き、慌てて、幼い子供を相手にするときの、丁寧な言葉で答える渚。
(なにわざわざ答えてんだか……)
いろいろな意味で真面目に答える必要もなかったのだが、そう指摘するのも面倒臭く感じて、彰吾はため息だけ吐いて黙っていることにした。
「そうか」
「ええそうよ〜。で、私たちに何の御用かしら?」
とまあ、このあたりで既に、少年が何をするつもりなのか、彰吾は気配で察していたのだが、あえて止めるようなことはせず……
「……悪く、思うな」
「んー? 誰を悪く思わないで欲しいのかな?」
同じく彼の次の行動が読めているであろうが、あくまで対応を変えない姉に、任せることにした。まあかといって、対話による解決を姉に求めているわけではなく、要するに、ガキとの会話に口を挟むのはかったるい、というだけのことである。
「父様の……」
「……」
「父様の仇ぃっ!!」
と、ややもたつきながら少年が取り出してきたのは、腰のホルスターに収められた銃。ヘルメットを持っていない右手で構え、銃口をこちらに……正確には渚の眉間に向ける。この状況になってさすがに、自分たちの横に並ぶ友人2名と、興味本位で推移を見守っていた通行人たちが息を飲む。
そして――
「覚悟しろっっ!!!」
彼らが状況を認識するや、そのトリガーは躊躇いもなく引かれたのだった。